現場で使う、運営支援の手引き
サ責の業務マニュアルの作り方
目次例と更新・共有の管理台帳
「前のサ責に聞かないと分からない」「手順書はあるけれど、今のやり方と違う」。サ責の業務マニュアルを整えるときは、仕事の説明に加えて、事業所で使う資料、確認する相手、終わりの条件を書きます。担当者が休んだ日にも、次の行動を確かめられる内容にしていきましょう。
最初に作るのは、困っている1業務の手順です。
「始めるきっかけ・担当と確認者・使う資料・手順・完了条件・例外時の相談先」をそろえます。そのうえで別の職員が使い、迷った箇所を直してください。承認後は最新版の場所を決め、変更内容が対象者に伝わったところまで確認します。
この記事では、目次例と1業務の書き方、更新・共有の運用を紹介します。Excelで編集できるマニュアル管理台帳も用意しました。
対象は介護保険の訪問介護におけるサービス提供責任者と管理者です。目次・手順・台帳は事業所内で整えるための参考例です。法定の指針や計画、個別の利用者の計画書を置き換えるものではありません。
共通マニュアルと利用者別の情報を分ける
サ責の仕事には、訪問介護計画の作成、利用者の状態の把握、関係者との調整、ヘルパーへの情報伝達などがあります。[1]これらを文書にするときは、全員に共通する仕事の進め方と、利用者ごとの支援内容を分けて管理すると、更新する場所を絞れます。
共通マニュアルには「計画書を作る際、何を確認して誰に相談するか」を書きます。利用者ごとの希望や支援内容は、各計画書や指示書など、事業所が定める個別の記録で管理します。共通マニュアルに全員分の情報をコピーすると、変更のたびに直す場所が増えてしまいます。
| 文書 | 主に書くこと | つなぎ方 |
|---|---|---|
| 共通の業務マニュアル | 仕事の順序、担当、確認者、記録先、迷ったときの相談先。 | 必要な様式と個別情報の保管場所を案内する。 |
| 利用者別の計画・指示・記録 | 本人の意向、支援の目標、具体的な内容、留意点、実施状況。 | 利用者ごとの最新版を確認できるようにする。 |
| 運営規程・各種指針や計画 | 事業所に適用される基準に沿った方針、体制、対応方法等。 | 業務マニュアルから必要な文書を参照できるようにする。 |
運営基準は、訪問介護計画の作成等を第24条、管理者・サ責の責務を第28条、運営規程を第29条に定めています。[2]このような制度上の文書と、毎日の作業を案内する手順書は、目的を確かめて結び付けましょう。
仕事の全体像をこれから学ぶ方は、先に新人サ責が覚える7つの仕事を見ると、どの業務から文書にするか決めやすくなります。
サ責の業務マニュアルの目次例
まず、事業所で実際に行っている仕事を次のように分類します。すべての章を新しく書く必要はありません。既に使える手順があれば、その場所を案内する目次から始められます。
- 業務の入口:担当範囲、管理者・事務職との分担、相談先、資料の探し方。
- 新規利用の調整:受け付ける情報、確認する資料、関係者との連絡、開始までの確認。
- 訪問介護計画:情報整理、作成・確認、説明・同意・交付、実施状況の把握、見直し。
- ヘルパーへの指示:共有する内容、指示を出す方法、変更時の連絡と確認。
- 実施記録の確認:確認する項目、不明点の問い合わせ、対応経過の残し方。
- 月間業務:各締め切り、担当、提出先、未処理の仕事を共有する方法。
- 緊急時・事故・苦情等:該当する既存の対応手順と連絡先への案内。
- 指導・研修:教える担当、実践の確認、振り返りの記録。
- マニュアル管理:承認、変更、周知、旧版の扱い、次回の確認。
この目次は実務整理の例であり、法令上必要な文書を網羅した一覧ではありません。請求や勤怠などの分担も事業所ごとに違います。実際の担当範囲と適用される基準を確認して調整してください。
新人育成の予定は、手順書とは別にサ責の研修計画で管理します。「手順があること」と「本人がその手順を使えること」を分けて確かめるためです。
作成から使い始めるまでの5段階
1.迷いや手戻りが起きている仕事を選ぶ
「サ責業務一式」のように広げず、「予定変更後のヘルパーへの連絡」「計画書を交付した後の保存」など、始まりと終わりを説明できる単位にします。安全への影響が大きい、担当者しか分からない、確認漏れを繰り返している業務から優先順位を相談します。
2.実際の資料を見て、今の手順を確かめる
担当者に聞くだけでなく、現在使っている様式や画面を一緒に確認します。「次に誰へ渡すか」「渡した後、何を確認するか」を追うと、口頭だけで済んでいる作業が見えてきます。
人によってやり方が違ったら、どちらかをそのまま正解として書かず、管理者と手順を決めます。制度や契約に関わる判断は、その場の慣習だけで固めないようにしてください。
3.行動と確認結果が分かる文章にする
「必要に応じて対応する」だけでは、初めて読む人が止まります。「予定と記録の内容が違う場合は、担当ヘルパーに事実を確認し、確認結果を指定の欄に残す」のように、きっかけ・相手・行動・記録をそろえます。
すべての例外を本文に足すと読みにくくなります。通常の流れを短く書き、判断が分かれる箇所に相談先を添えます。画面写真を入れる場合も、説明用データを使い、実在の利用者情報を教材に残さないようにします。
4.別の職員が試し、止まった場所を直す
作成者が隣で答えを先に伝えず、まずは説明用の資料で手順をたどってもらいます。「どのファイルを開くのか」「どこまで終われば完了か」が分かるかを見ます。実際の支援や外部連絡を、練習のために無断で進めることはしません。
質問が出たら、相手の理解不足だけで片付けず、必要な説明が抜けていないか確認してください。職員が手順書の言葉で説明できても、画面上の該当箇所を探せなければ、保管場所や画像の案内を補います。
5.承認して、使う日と置き場所を知らせる
誰が内容を承認したか、いつから使うか、最新版はどこにあるかを決めます。サ責が書き上げただけで完了にせず、管理者や関連業務の担当者と分担・受け渡しを確認しましょう。
紙で配布する場合も、文書名・版番号・適用日をそろえます。共有フォルダーに置く場合は、閲覧できない職員がいないか、編集権限を持つ人が適切かも確かめます。
1業務の手順書に書く内容と記載例
以下は、予定変更の調整が済んだ後に、事業所内へ伝える場面を想定した架空の記載例です。実際の連絡手段、権限、確認方法に置き換えて使います。
| 書く項目 | 記載例 |
|---|---|
| 始めるきっかけ | 関係者との調整後、変更する日時・担当・援助内容が確定したとき。 |
| 担当と確認者 | 担当サ責が更新・連絡を行う。不在時の担当と、変更内容を確認する人は連絡体制表で確認する。 |
| 使う資料 | 確定した調整記録、最新版の予定表、必要な個別の計画・指示。保存先は文書一覧を参照する。 |
| 作業の順番 | 対象者と変更箇所を確認する。予定表・必要な指示を更新する。事業所の連絡手段で対象職員へ知らせ、確認状況を記録する。 |
| 完了の条件 | 変更後の資料と連絡内容が一致し、対象職員の確認が取れている。古い指示で動かないよう、差し替え等が済んでいる。 |
| 例外時の相談 | 確認の返事がない、内容が食い違う、変更の前提が崩れた場合は、定めた期限までに確認者へ報告して対応を相談する。 |
| 残す記録 | 変更内容、連絡先、連絡日時、確認日時、未解決事項と対応担当を、事業所の指定する記録に残す。 |
「定めた期限」「連絡体制表」などの部分は、実際に使う前に具体化します。緊急度の高い変更なら、通常の連絡の返事を待てない場合もあります。連絡がつかないときに誰が判断するかまで決めてください。
この例が扱うのは、変更の共有手順です。サービス内容そのものを変更してよいか、計画の変更が必要かという判断を省略するものではありません。計画を変更する場合の説明・同意・交付等は、別の手順と結び付けます。[2]
更新・共有・旧版管理までを台帳で追う
作った後に使われなくなる理由の一つは、現場と文書が食い違い、どちらが正しいか分からなくなることです。各文書に更新担当を置き、変更の発生から周知までを一続きで管理します。
見直すきっかけを決めておく
- 制度、指定権者の取扱い、契約や事業所の方針が変わった。
- 記録ソフト、様式、保存先、連絡方法が変わった。
- 人員や分担が変わり、確認者・相談先が変わった。
- ヒヤリハットや質問から、手順の不足が分かった。
これらが起きたときは、次の定期点検まで待たず、影響する手順を確認します。あわせて事業所で見直し日を決め、変更がない文書も、連絡先や参照リンクが使えるか点検してください。一律の更新頻度を本記事で定めるものではありません。
修正した人以外にも、変更点が分かるようにする
改訂時は「どこが変わったか」「いつから使うか」「誰が確認する必要があるか」を知らせます。全文を送り直すだけでは、忙しい職員が違いを見つけにくいためです。手順を大きく変えた場合は、説明や練習の機会も用意します。
既読の表示は、画面を開いたことの参考にはなりますが、内容を理解し実行できることまでは確認できません。重要な変更では、担当者に新しい手順を説明してもらうなど、確認方法も選びます。
旧版は最新版と混ざらない場所で管理する
旧版を残す場合は、使用中のフォルダーと分け、「旧版」と分かる状態にします。紙の手順書は、配布先を確認して差し替えます。過去の運用をたどるために必要な文書まで、一律に削除しないよう、事業所の保存方針と適用される保存要件を確認してください。
マニュアル管理台帳をダウンロード
文書ID、文書名、管理担当、版番号、適用日、最新版の場所、改訂内容、承認、周知、旧版の扱い、次回確認日を管理できます。3件の記入例を、自事業所の内容に置き換えて使ってください。
マニュアル管理台帳をダウンロード(CSV)Excelで編集できる参考様式です。記入例は架空です。利用者名や支援内容は台帳に転記せず、アクセスを管理している資料の保存先等を参照してください。
担当交代時には、この台帳を使って「資料があるか」に加え、「後任が最新版を探して使えるか」を確かめます。個別の案件や未処理の仕事は、期限と対応担当を別途引き継ぎます。制度上の文書と実際の運用を確認する際は、訪問介護の運営指導に向けた準備も参考にしてください。
住宅型有料老人ホーム併設では、役割の境界を明記する
同じ建物で施設職員と訪問介護職員が動く場合、全体の業務一覧だけでは、どの立場で行う仕事か分かりにくくなることがあります。マニュアルには、担当する役割と、確認する契約・計画を示します。
たとえば施設側の予定が変わったとき、訪問介護側の予定や個別の指示に影響するかを誰が確認するのか、書き分けます。「施設から連絡があったので変更済み」と考えず、訪問介護側の調整・記録・共有がどこまで済んだかを追える形にしてください。
また、施設の共通マニュアルに利用者別の詳しい情報を広く複製すると、情報に触れる範囲と更新箇所が増えます。仕事上必要な人が、必要な情報を確認できるよう、保存場所と権限を管理者と整理しましょう。
保険給付の対象や職員の兼務・配置の可否は、個別の条件と指定権者の取扱いを確認する必要があります。手順を文書にしたことだけで、制度上の判断が済むわけではありません。
サ責のマニュアル作成でよくある質問
市販の本や他事業所のひな形を、そのまま使えますか?
業務を学ぶ参考にはなりますが、自事業所の担当、保存先、連絡方法に合わせた確認が必要です。発行・改訂時期と対象サービスも確認してください。転載や配布をする場合は利用条件を守ります。
紙とデジタルでは、どちらがよいですか?
必要な場面で職員が使え、最新版を管理できる方法を選びます。紙は配布先と差し替え、デジタルはアクセス権限と端末からの閲覧を確認します。併用する場合は、どれが原本かを決めます。
新人には、最初に全部読んでもらうべきですか?
最初に相談先と全体の目次を案内し、担当する業務に合わせて必要な箇所を使う進め方が考えられます。読了だけで習得とせず、実際の資料を使った確認や練習を組み合わせてください。
このマニュアルを作れば、運営指導への対応は十分ですか?
本記事の目次や台帳だけで十分とは判断できません。適用される基準や算定要件に応じた文書・記録・実際の運用を確認する必要があります。本稿は、日常の手順を共有し、更新を管理するための提案です。
まずは、繰り返し聞かれる1業務を文書にする
今週、職員から繰り返し聞かれた仕事を1つ選び、担当者と確認者で手順を書いてみてください。別の職員が資料を探し、次の行動を説明できるか試します。迷ったところを直せば、次に作る手順書にも生かせます。
書いてみると、マニュアルの不足より、確認者が決まっていないことや、同じ情報を何度も入力していることが問題だと分かる場合もあります。その場合は、今のやり方をそのまま固定せず、分担や情報の受け渡しを見直しましょう。
えぇ塩梅屋では、住宅型有料老人ホーム・訪問介護の実際の業務と育成体制を整理する支援を行っています。教える内容を整えたい方はサ責育成・研修支援、分担や日々の業務から整理したい方は総合運営支援をご覧ください。